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今週の書評09/07/19

<毎日新聞 2009年7月19日 書評欄>

●河竹黙阿弥 元のもくあみとならん 今尾哲也著 渡辺保評

江戸末期から明治にかけて、歌舞伎の戯曲を書いた人物の評伝。

「狂言作者は戯曲を書くときに、せりふを登場人物の役名ではなく、その役を演じる役者の名前で書いた。(中略)なぜそんなことをするかといえば、役者に当てはめて書くからである。それも単なるあて書きといったものではない。役者が全て。そこから役者の魅力をどう引き出すかだけが問題であり、役者が気に入り、そのひいきが喜ぶように書く。その結果、作者は芸術家としての自立を失う」

「それは歌舞伎社会の特殊な習慣による。その習慣からもう一つの違いが見える。すなわち玄人と素人の違い。この違いは今日いうところのプロとアマチュアの違いではない。閉鎖的な特殊社会の住人であるか、あるいは一般社会の市民であるかの違いであった」

黙阿弥は六十五歳で引退して「素人」の世界に戻り、日本の戯曲を書いた。しかし二本とも未完。「今尾哲也によれば「無から有を生み出すことは、黙阿弥には出来なかった」からである」

※因みに「元の木阿弥」という言葉はこの黙阿弥とは関係ない。

●1968年に日本と世界で起こったこと 毎日新聞社編 富山太佳夫評

「明治維新から数えて100年目、パリの五月革命の年であり、大学紛争の年であり、オバマ大統領が敬愛してやまないキング牧師が暗殺された年であった。ベトナム戦争がまだ継続しており、ベルリンの壁が崩壊する二十年ほど前であった。(中略)そのような時代をさまざまの角度から語るエッセイを二十本、インタビューを二十本集めたのがこの本である」

評者は僕より少し上の団塊の世代のようだが、この本に対しては思い入れが強い(時代)なのか、自分のことを書き過ぎる。

●花田清輝 生誕100年特集

川本三郎評

「日本の文学の主流が青春文学にあるとすれば、花田清輝はそれに異を唱え続けた珍しい評論家だった。?もはや青春とは曖昧以外のなにものでもないのだ」(晩年の思想ーソフォレスク)というこの老練な批評家は青春の苦悩、純粋、ヒロイズムなどを終始、せせら笑った」

「ゴダールの「勝手にしやがれ」の一場面を取り上げ、自分の批評の方法を語っている。自動車に乗ったドゴールとアイク(アイゼンハワー米大統領)が歓呼の声を浴びてパリの大通りを行進してゆく。それに対して主人公のジャン・ポール・ベルモンドは二人の行進などには目もくれず、群集のあいだをぬって横町へ入ってゆく。この「ディグレッション」(逸脱)こそ自分の批評だとうれしそうにいう」

井波律子評

「花田清輝は稀代のレトリシアンである。(中略)「「(処女作の)「復興期の精神」初版の跋で、「戦争中、私は少々しゃれた仕事をしてみたいと思った。そこで率直な良心派のなかにまじって、この一連のエッセイを書いた。良心派は捕縛されたが、私は完全に無視された。いまとなっては、殉教者面ができないのが残念でたまらない。思うに、いささかたくみにレトリックを使いすぎたのである」と言ってのけるのだから、どう見てもタダモノではない」

二人の評には他にも色々と書いてあるが、要約すると、一見、正攻法/王道を嫌い、斜に構えて畑のあぜ道や側溝の泥の中を、空を見上げながら歩いているような体で、文体も自分の中の逡巡や煩悶をそのまま言葉にしてしまうのだが、自分の知性を誇って他の王道派を側面から要撃するような類の批評家のようだ。

さらに言うと、前記の「黙阿弥」と同様、「無から有を生み出せない」性質の人だったんだろう。

僕にはよく分かる。

、、、
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プロフィール

HYPO

Author:HYPO
HYPO(hypo)とは、

●hypo=チオ硫酸ナトリウムの通称
●hypoxia=酸素欠乏症
●hypocrite=偽善者
●hypo(他動詞)=1 ?に皮下注射 する 2 刺激 する 3 増強する
●hypo(接頭語)= 〔正常値より〕下の、異常に低い

※因みに・・・、
カバはhippopotamus

美大中退後、肉体労働を経て店舗プランニングの世界へ飛び込み、都銀のCIデザインなどを手がけた後、今度はマーケティング分野に首を突っ込み、30で独立。
23年ほどプランニング会社の代表を務めた後、ライブバーの経営に手を染めて半年で挫折。就職活動の末入社した設計事務所勤務を5ヶ月でリタイヤし、現在事務所として使っていた自宅の地下を音楽スタジオとして運営中。

学生時代から始めたバンド活動が、なんやかやと続いていて、気が付けば音楽がいつも身近にあった、という感じかな。

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