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今週の書評は盛り沢山(1)

興味深い本がたくさん紹介されていたので、分割掲載になった。

<毎日新聞 2009年5月31日 書評欄より>

●格差社会の衝撃 ?不健康な格差社会を健康にする法 
  リチャード・G・ウィルキンソン著 山内昌之評

著者はイギリス人だけど、これは日本についても書いているらしい。

「十年以上前にさかのぼると、日本は先進国でもいちばん平等であり、日本人の健康状態も良く社会問題はほとんど深刻でなかった。(中略)著者は日本語版への序文において、相対的貧困の中で暮らす子供の数が増え続ける兆候を指摘した。親が低い地位や相対的貧困の中で生きるストレスや困難は、家族関係にも悪い影響を与えてしまうというのだ。低所得と言う”汚名”がもたらす家庭のストレスで育つ子供の割合が上昇すれば、それがもたらす帰結に日本も苦しむという指摘には不気味な予言性がある」

「(経済発展によって絶対的かつ物資的欠乏が解消された結果生じる健康の変化である)疫学転換の重要な特徴は、すべての年齢層、とくに子供に多く見られた古いタイプの感染症死亡が減少し、代わって心臓病や癌のような変成疾患が増加している点にあるというのだ。また、基本的必需品を得るのに苦労せず健康になる条件が達成されると、いわゆる「贅沢病」の社会的分布も逆転し、豊かな社会では金持ちでなく貧困層の間に広がっていく。確かに、日本でも今では貧困層の方に金持ちよりも太っている人もいる現象は珍しくない」

「(集団的密度効果とは)何であれ少数派に属する人が同じ少数派の集団に属する人たちの割合が小さな地域に住むと、精神衛生的に良くない結果が出る現象である。(中略)不平等が増せば、社会関係の質が低下し、信頼関係が失われ、劣位に置かれることを拒否しようとする者による暴力が増大し、ストレスによって健康は悪化する」

ロマンチシズムでこうした考え方を否定することも出来るんだけど、統計的に処理すればこうなるんだろうな。かなり気持ちの悪い書物だ。


●いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ 吉川洋著 中村達也評

「不況に陥るたびにケインズがよみがえる。「バラマキ財政」「大きな政府」「官僚主義」などに結びつけられて、かつての輝きを失ったかに見えたケインズが、昨年来の世界不況の中で、息を吹き返したかのようだ。先進諸国はおしなべて、不況脱出のためにケインズ的な財政出動に踏み切った。ところが著者は、ケインズ「と」シュンペーターに学べ、と言う。それというのも、シュンペーターは「不況なくして経済発展なし」という、ある種の不況必要悪説を唱えていたからだ」

「ケインズは、需要不足を財政金融政策によって解決しようと考えた。一方、シュンペーターは、需要が飽和したモノに代わって新しいモノを作り出すこと、すなわちイノベーションこそが企業家の役割だと説いた」

美大に行っていたから、経済学などは基礎も学んでいない。しかし、金融政策や財政出動などは、学問で学ばなくても分かるし、そもそも経済学というものは心理学と同様の「学問」とも呼べないような曖昧なものだろう。物理学の不確定性原理のように、観察して理論化することが、新たな局面を発生させてしまうという、手に負えない存在なんだ。

だから、いくら過去のテキストを引っ張り出そうが、新たな理論を打ち立てようが、人間の欲望に果てが無いのと同じで、経済にも果てはないのだと思う。

●アメリカ後の世界 ファリード・ザカリア著 五百旗頭真評

「本書は、インドに生まれ育ち、アメリカに留学してその才能を開花させた知識人の手になるアメリカ論である。(中略)さて、本書は過去五百年に三度の大変動が起こったとする。第一は産業革命を中心とする近代化であり、それによりイギリスを先頭に西洋諸国が世界の主人公となった、第二は十九世紀末のアメリカの台頭であり、二十世紀のアメリカはローマ帝国以来最強の国家となった。そして今、第三のシフトが始まっている。それは「反アメリカの世界」ではなく、中国、インドをはじめ地球上いたるところで多くの国が頭をもたげる「アメリカ後の世界」であるとする」

「十九世紀まで中国・インドが西洋文明と同水準であったとの説を本書はとらない。貧しい巨大人口に支えられるGDPのサイズは意味をなさない。一人当たりの水準に示される発展度、新技術や新方式を生み出す気風や活力、そして社会システムが、国の興隆により密接に関係するとする。また本書は文化的側面に関心を示しつつ文化決定論を斥ける。なぜ休眠していた中国・インドが今走り出したか文化論では解けない」

以前に僕は経済強国の推移について、イギリス(資源小国)→アメリカ(資源大国)→日本(資源小国)→中国(資源大国)という単純な図式で考えたのだけど、あまり意味のある筋道ではなかった。技術や情報による優位性が興り、その情報が一般化すると、より資源のある(体力のある)国が技術のみの国を凌駕する。そしてまた新たな技術と情報が生れる。

この繰り返しであることは、ある程度合っていたと思うのだが、技術を盗むことは戦争などの対立関係にある国同士では、何ら訴追されるいわれは無いので、乱暴な関係が続いてきた過去においては、新しい技術や情報はタダだった。ところが、現在は世界のほとんどが仲良しクラブのメンバーになっているから、やたらな盗作は出来なくなっている。

環境も背景も変化するから、過去と未来をいっしょくたに分析することはできないし、精緻に情報を集めて、技巧を凝らした分析を加えても、結局ロマンチックな物語になってしまう。

、、、
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プロフィール

HYPO

Author:HYPO
HYPO(hypo)とは、

●hypo=チオ硫酸ナトリウムの通称
●hypoxia=酸素欠乏症
●hypocrite=偽善者
●hypo(他動詞)=1 ?に皮下注射 する 2 刺激 する 3 増強する
●hypo(接頭語)= 〔正常値より〕下の、異常に低い

※因みに・・・、
カバはhippopotamus

美大中退後、肉体労働を経て店舗プランニングの世界へ飛び込み、都銀のCIデザインなどを手がけた後、今度はマーケティング分野に首を突っ込み、30で独立。
23年ほどプランニング会社の代表を務めた後、ライブバーの経営に手を染めて半年で挫折。就職活動の末入社した設計事務所勤務を5ヶ月でリタイヤし、現在事務所として使っていた自宅の地下を音楽スタジオとして運営中。

学生時代から始めたバンド活動が、なんやかやと続いていて、気が付けば音楽がいつも身近にあった、という感じかな。

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